五十肩など肩関節に痛みを訴える方の治療に難渋している方へ
外来患者において肩関節周囲炎、いわゆる五十肩などで来院される方がいらっしゃると思います。外来で来られた患者さんは、肩関節の拘縮や筋力低下によって腕があがらないなどの関節可動域制限を認めたり、挙上時に疼痛を訴えることもあると思います。そこで今回は、挙上時の痛みの原因とそれを改善する方法、また、肩関節の関節可動域が改善する方法についてお伝えしようと思います。 (経験年数の少ないセラピストや運動器疾患の治療経験が少ないセラピスト向けに作成しました。経験の多いセラピストの方には基本的な内容になりますが、知識の整理などに活用していただけますと、幸いです。)
肩関節に疼痛を誘発する原因
肩関節に痛みが出現する原因はいくつかあります。原因により、治療手段が変わってきますので、まずはその原因を特定する必要があります。
痛みの原因として、特に臨床的にも頻度の多い原因は、
・腋窩神経の絞扼性神経障害 (急性期・拘縮期以降)
・肩峰下インピンジメント (亜急性期・拘縮期以降)
・夜間痛による炎症 (急性期)
などが挙げられます。それぞれの要因について、説明していきます。
腋窩神経の絞扼性神経障害
肩関節周囲炎の患者さんにおいて、「肩関節の外側が痛い」「特に腕を挙げたときに痛い」などの訴えは非常に多いと思います。

その原因の1つは腋窩神経(Axillary Nerve)です。腋窩神経は、肩関節後方を通過する神経で、3つの筋肉(小円筋・大円筋・上腕三頭筋長頭)によって覆われています。
絞扼性神経障害を引き起こすメカニズムとして、これらの3つの筋肉のうち、いずれかの筋肉が筋攣縮や短縮を引き起こすことにより、腋窩神経を圧迫して、絞扼性神経障害を引き起こすと考えられます。(治療方法については後述)

その際、腋窩神経は肩関節後方を通過するにも関わらず、支配領域は肩関節外側のため、肩関節挙上時に、肩関節外側に痛みを誘発することが考えられます。そのため、後述しますが、筋攣縮が比較的軽度の患者様であれば、肩関節後方の3筋のダイレクトストレッチングなどにより腋窩神経の圧迫が軽減することで、一時的に痛みが軽減することもあります。一度お試しください。
肩峰下インピンジメント
肩峰下インピンジメントとは、肩峰下腔が狭小化し、腱板などを圧迫することにより腱板損傷などを引き起こす。その際、軟部組織が損傷することで、疼痛が出現することがあります(Seitz AL,.2011)
肩関節挙上時には、インナーマッスル・アウターマッスルが協調的に作用します。 これらの筋肉のいずれかが短縮し、協調的な動きが阻害されると、正常な肩関節の運動が阻害されます。 肩関節周囲筋の拘縮が起こっており、その状態で上肢を挙上すると、正常な肩関節の運動が阻害されます。肩峰と上腕骨頭の間などで、軟部組織が挟み込まれることによって、肩関節挙上時に疼痛を生じます。(そのため、正常な肩関節の運動学と、拘縮を引き起こしている筋肉を同定する方法については重要なため、後述します。)
炎症による夜間痛
肩関節周囲炎は、肩関節組織の損傷が起こり炎症を引き起こす炎症期、組織の損傷により拘縮を引き起こす拘縮期、その後、拘縮が改善してくる寛解期の3期の経過をたどります。 急性期(炎症期)の場合、関節可動域制限は少ないものの、肩関節周囲の軟部組織の損傷により炎症を引き起こし、夜間痛などの痛みを感じることが多い。一方、拘縮期になると、夜間痛は軽減もしくは消失していることが多いです。
日常生活内で、頻繁に肩関節に負荷のかかる仕事や動作をされている方は、急性期以降においても疼痛を有している方が多い印象を受けます(こちらも評価方法については後述島します)。
疼痛に対する評価
腋窩神経の絞扼性神経障害の評価
先述した腋窩神経領域に‘Palmar painを訴える。ここでOne point painであれば、ほかの要因を考える
肩峰下インピンジメントの評価
肩峰下インピンジメントの評価は整形外科的テストにて確認する (Park HB,.2005)
①Neer’s sign (ニアサイン) 立位にて肩関節を屈曲することにより疼痛を誘発するかどうかにより判定する
②Howkins-kennedy impingement sign (ホーキンスケネディサイン) 肩関節90°屈曲に加えて、肩関節内旋することで痛みを誘発するかどうかにより判定する
上記の検査により陽性となった場合、肩峰下インピンジメントを引き起こしていることが考えられる。
夜間痛の評価
問診にて、夜に痛みを感じるかどうかを確認する。ちなみに、夜に軽度の痛み~寝付けないほどの痛みがある場合、整形外科医と相談し、薬物療法による鎮痛効果なども検討する。
まとめ
今回は、五十肩など肩関節における疼痛の原因と評価方法についてまとめました。
肩関節の痛みにおいても、原因は複数あり、それぞれアプローチが異なります。
今回はその一例をご紹介させていただきましたが、他にも多くの原因とそれに対するアプローチがありますので、ご自身の引き出しをどんどん増やしていってください。
皆さんのお役に立てれば光栄です。今回もありがとうございました。

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