はじめに
変形性膝関節症の方は、膝痛により日常生活に大きな影響があることが報告されています。臨床上においても、外来患者さんのほとんどの主訴に、膝痛が含まれています。以前の稿では、運動療法が膝痛の軽減に及ぼす影響についてご説明しました。今回は、運動療法に加え、減量が膝痛の軽減に対して効果があるかどうかについてご説明します。
変形性膝関節症における減量が膝痛の減少に及ぼす影響
結論から申し上げますと、運動療法に減量を加えた場合、膝痛の軽減につながることが報告されています。運動療法のみ、減量のみでも膝痛の軽減は認められています。
この論文では、減量+運動療法では、運動療法のみ、減量のみと比べて、膝痛の減少に対して有効かどうかについて報告されています。
対象者
今回の対象者の条件は、
過体重(BMI 27~40)の変形性膝関節症 454名に加えて、(a) KL grade 2~3、(b) ほぼ毎日膝痛あり、(c)運動習慣の少ない方、という条件を満たしている方です。
臨床的にも、よく患者さんに当てはまる条件になります。
介入内容
運動介入
運動介入は、週3日、1時間、18ヵ月にわたって行われました。
プログラムは、有酸素ウォーキング(15分)、筋力トレーニング(20分)、2回目の有酸素運動(15分)、クールダウン(10分)で構成された。
ちなみに、この論文では介入期間は18か月ですが、
後述の内容で、介入初期→介入後6ヶ月の間にも疼痛の軽減は認められています。臨床上、外来患者さんは、リハビリの継続期間は3ヶ月程度ですが、そのような方に対しても、今回のプログラムを適応することが可能です。
減量介入
食事療法は、1日2食までの食事代替シェイク(Lean Shake; General Nutrition Centers)という食事代替を基本としており、3食目は、500~750kcal、低脂肪、高野菜の1週間の献立としています。
カロリー配分の目標は、タンパク質15~20%、脂肪30%未満、炭水化物45~60%としています。
肥満の評価として体重測定とBMIを算出することで、患者さんにトレーニング効果をフィードバックし、運動継続につなげましょう。
介入による膝痛軽減への効果

介入より18ヵ月後、WOMACの疼痛スコアを比較すると、減量群および運動群に比べ、減量+運動群の方が疼痛の軽減を認めています
WOMAC機能スコアにおいても、運動群および減量群に比べ、減量+運動群で有意に膝関節機能の改善を認めています
このことから、運動や減量を単体で行うよりも、運動と減量を併用する方が、長期的に高い効果が期待されます。
ちなみに、運動群vs減量群で比較した結果では、有意差は認められませんでした。運動と減量のどちらがより疼痛軽減に重要かどうかについては、議論の余地があるようです。
まとめ
今回は、変形性膝関節症における減量が膝痛の減少に及ぼす影響についてご説明しました。
運動療法に減量を加えた場合、膝痛の軽減につながるため、膝OAの外来患者さんへ運動指導を行う場合は、低脂肪、野菜を多めに摂取し、減量を図りつつ、筋力トレーニングを行うことが長期的な膝痛の軽減につながると考えられます。
また短期的な介入についても、疼痛の軽減は認められています。食事指導をしつつ、運動を6ヶ月間続けることで、膝痛の軽減を認めています。
病院などで栄養士さんによる栄養指導ができる場合は、減量に対してより効果の高い栄養指導などを導入することも検討してみましょう。
運動療法のみでも、短期的に疼痛軽減の効果がありますので、有酸素運動や筋力トレーニングで筋力増強を図ることで、膝痛の軽減につなげることもよいと思います。
積極的に運動や栄養指導をすることで、変形性膝関節症患者さんの膝痛を軽減していきましょう!
参考文献
Messier, S. P., Mihalko, S. L., Legault, C., Miller, G. D., Nicklas, B. J., DeVita, P., Beavers, D. P., Hunter, D. J., Lyles, M. F., Eckstein, F., Williamson, J. D., Carr, J. J., Guermazi, A., & Loeser, R. F. (2013). Effects of intensive diet and exercise on knee joint loads, inflammation, and clinical outcomes among overweight and obese adults with knee osteoarthritis: The IDEA randomized clinical trial. JAMA, 310(12), 1263–1273. https://doi.org/10.1001/jama.2013.277669
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