エビデンスに基づいた変形性膝関節症の治療は?

変形性膝関節症

はじめに

臨床現場において、変形性膝関節症の患者さんは非常に多く、膝の痛みなどの訴えにより、歩行や立ち座り、階段昇降などのADLに制限を認めています。

そのため、限られた時間の中で、より効果の高い治療方法の習得が重要となってきます。

そこで今回は、多くの海外の研究によって、効果が証明された治療方法を皆さんにご説明していきたいと思いますので、是非臨床に応用してみてください。

そもそも、膝OAの根本的な治療はあるのか?

そもそも、「膝OAに対する根本的な治療はあるのかどうか」という疑問について、結論から申し上げますと、現時点では根本的な治療は確立されておりません

Duongら1)の2023年JAMAに掲載されたレビュー論文では、

現在の治療アプローチは症状を緩和することに重点を置いており2) disease modification(症状および関節構造の改善)のための治療法は特定されていない3)」と述べられています。

そのため、今回の稿では「変形性膝関節症の症状を緩和する」ことを目的として膝OAの治療方法についてご説明していきます。

エビデンスに基づいた変形性膝関節症の治療とは?

エビデンスに基づいた変形性膝関節症の第一選択治療は、以下の4つのプログラムで構成されています。

運動療法

減量(過体重の場合)

膝装具

患者教育

それぞれの治療方法について解説していきます。

運動療法

運動療法の中で変形性膝関節症に効果的なトレーニングは、大腿四頭筋のトレーニングです。

2015年のコクランレビュー4)にて、大腿四頭筋の筋力トレーニングは疼痛の軽減に効果的であるということが、報告されています。

詳細については、以前の投稿でも「大腿四頭筋に対するトレーニング戦略と実際」について詳しくご説明していますので、ご参考ください。

減量

膝OA患者さんは、皆さんもご存じの通り、肥満(過体重)が特徴として挙げられます。

2018年のObesity reviews5)に掲載されたメタアナリシスでは、過体重の膝OAにおいて減量することが膝痛の減少につながることが報告されています。

この中でも、Messierらが、2013年に報告した論文の介入内容については、「変形性膝関節症における減量が膝痛の減少に及ぼす影響」でご説明しているので、参考にしてみてください。

膝装具

臨床現場において、頻繁に処方される膝関節装具が、膝関節の痛みに対して効果があるのでしょうか。

Cudejkoらが、2018年に報告したシステマティックレビューにおいて6)膝装具なしと比較して、膝装具ありでは、痛みの軽減と機能の改善を示しています。

患者教育

患者教育は、膝OAの疼痛の軽減につながることが2021年にGoff7)らにより報告されています。

さらに患者教育と運動療法を併せて行うと、患者教育単体よりも効果が大きいことも報告されています。

そちらの詳細については、「変形性膝関節症における患者教育が膝痛の減少にどのような影響を与えるか?」でご説明していますので、参考にしてみて下さい。

まとめ

今回は、エビデンスに基づいた変形性膝関節症の治療について解説しました。

変形性膝関節症の症状緩和に効果的な治療として、①運動療法(大腿四頭筋トレーニング)、②減量、➂膝装具、④患者教育が有効です。

膝OAの発症後、根本的治療が確立されていないことを考えると、今後はこのような対症療法の強化に加え、発症・進行の予防的治療についても検討していくことが重要であると考えます。

参考文献

1)Duong, V., Oo, W. M., Ding, C., Culvenor, A. G., & Hunter, D. J. (2023). Evaluation and Treatment of Knee Pain. JAMA, 330(16), 1568. https://doi.org/10.1001/jama.2023.19675

2)Bannuru, R. R., Osani, M. C., Vaysbrot, E. E., Arden, N. K., Bennell, K., Bierma-Zeinstra, S. M. A., Kraus, V. B., Lohmander, L. S., Abbott, J. H., Bhandari, M., Blanco, F. J., Espinosa, R., Haugen, I. K., Lin, J., Mandl, L. A., Moilanen, E., Nakamura, N., Snyder-Mackler, L., Trojian, T., … McAlindon, T. E. (2019). OARSI guidelines for the non-surgical management of knee, hip, and polyarticular osteoarthritis. Osteoarthritis and Cartilage, 27(11), 1578–1589. https://doi.org/10.1016/j.joca.2019.06.011

3)Oo, W. M., & Hunter, D. J. (2022). Repurposed and investigational disease-modifying drugs in osteoarthritis (DMOADs). In Therapeutic Advances in Musculoskeletal Disease (Vol. 14). SAGE Publications Ltd. https://doi.org/10.1177/1759720X221090297

4)Fransen, M., McConnell, S., Harmer, A. R., Van der Esch, M., Simic, M., & Bennell, K. L. (2015). Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2015(1). https://doi.org/10.1002/14651858.CD004376.pub3

5)Chu, I. J. H., Lim, A. Y. T., & Ng, C. L. W. (2018). Effects of meaningful weight loss beyond symptomatic relief in adults with knee osteoarthritis and obesity: a systematic review and meta-analysis. In Obesity Reviews (Vol. 19, Issue 11, pp. 1597–1607). Blackwell Publishing Ltd. https://doi.org/10.1111/obr.12726

6)Cudejko, T., van der Esch, M., van der Leeden, M., Roorda, L. D., Pallari, J., Bennell, K. L., Lund, H., & Dekker, J. (2018). Effect of Soft Braces on Pain and Physical Function in Patients With Knee Osteoarthritis: Systematic Review With Meta-Analyses. In Archives of Physical Medicine and Rehabilitation (Vol. 99, Issue 1, pp. 153–163). W.B. Saunders. https://doi.org/10.1016/j.apmr.2017.04.029

7)Goff, A. J., De Oliveira Silva, D., Merolli, M., Bell, E. C., Crossley, K. M., & Barton, C. J. (2021). Patient education improves pain and function in people with knee osteoarthritis with better effects when combined with exercise therapy: a systematic review. Journal of Physiotherapy, 67(3), 177–189. https://doi.org/10.1016/j.jphys.2021.06.011

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